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白石工業は、炭酸カルシウムの化学合成に成功し、業界のパイオニアとして君臨してきた。 |
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炭酸カルシウムの需要は高く、ゴム、プラスチックをはじめ、 |
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印刷インキ、製紙、塗料など、様々な化学工業で利用されている。 |
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昭和2年、白石工業は、微細な膠質炭酸カルシウムを微粉化することに成功した。 |
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その名を『白艶華』と称し、世界的に有名な商品となった。 |
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ゴム、プラスチック製品などの補強充填剤として、その需要は高い。 |
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製紙用顔料、白色塗料、印刷インキの体質顔料、シーラントの粘度調整剤としての需要もある。 |
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また、加工食品のカルシウム強化剤としの需要もある。 |
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とにかく、この分野は、あらゆる業界と密接な関係があるのだ。 |
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パソコンの普及により、インクジェット紙の需要が高まっている今日であるが、 |
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インクジェットプリンター紙に炭酸カルシウムの微粒子が使われている。 |
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これにより、紙にインクが滲むのを防ぎ、美しいプリントができるようになった。 |
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このように需要の高い炭酸カルシウムであるが、その製造工程を説明しよう。 |
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まず、石灰岩の地層をダイナマイトで爆破して岩を切り崩す。 |
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崩れてきた石灰岩を『クローラードリル』や『削岩機』で人間の頭ほどの大きさにする。 |
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それをブルドーザーで掻き揚げ、『グリズリ』という滑り台の上に転がし、泥や小さな石を除去する。 |
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この石灰石の塊をシャワー場に運び、水をかけて泥を洗い流す。 |
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そして、『クラッシャー(1次粉砕機)』で粉砕し、10cm以下の大きさ程にする。 |
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その塊をベルトコンベアーで運び、『ディスインテグレイター(2次粉砕機)』に投入する。 |
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『ディスインテグレイター』により、11mm以下の大きさまで粉砕される。 |
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こうしてできた砂上の石灰石は、原料砂として『サイロ』に蓄積される。 |
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これがその『サイロ』である。山の上に一際目立って建っている。 |
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『サイロ』から必要量の石灰石が、『原料ピット』に投入され、『原料砂タンク』に貯蔵される。 |
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『原料砂タンク』から、石灰石が一定量ずつ『ミル(3次粉砕機)』に送られる。 |
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『ミル』には色んな種類があるが、私が見た事があるのは、次の3種類だ。 |
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まず、鉄球の入った『ボールミル』だ。亜鉛や鉛の産出で有名な岐阜のM鉱山で見た事がある。 |
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実際に野球ボール大の鉄球がいくつも入っていて面白い構造をしていた。 |
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鉄球の入ったドラムを回転させて、鉄球同士の衝突の衝撃で鉱石を粉砕する仕組みだ。 |
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続いて『ローラーミル』。大きなローラーを回転させて、鉱石を粉砕する仕組みだ。 |
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最後に『ミクロンミル』。高速回転板による衝撃と摩擦で鉱石を粉砕する仕組みだ。 |
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『ミル』から出てきた粉は様々な大きさの粒子が含まれるので、これを分級する必要がある。 |
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そこで活躍するのが『エアーセパレーター(風力分級機)』だ。 |
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『エアーセパレーター』は、空気の流れによって大きな粒子と小さな粒子に分級する。 |
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何段階かの分級過程を経ると、粒子の揃った『重質炭酸カルシウム(重炭)』が得られる。 |
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更に細かな不純物・異物を取り除いた後、空気輸送管を通って、製品貯蔵サイロに送り込まれる。 |
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サイロに貯蔵された重炭は、袋詰機により、袋詰されて製品となる。 |
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これが、恐らく重炭の袋詰めをする装置だろう。 |
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重炭は、石灰石を直接粉砕して製品にするので、化学反応工程がない分、安価である。 |
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その為、原料として大量に使用する場合に用いられる。 |
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学校の運動場などのライン引きに利用されるのもこの重炭だ。 |
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これに対し、白石工業の名産である『軽質炭酸カルシウム(軽炭)』は、更に工程が複雑だ。 |
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粉砕した石灰石を『熱乾炉』で800〜1300℃の高温で熱成する。 |
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すると、『生石灰(酸化カルシウム)』が生成する。 |
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生石灰は、せんべいなどの袋に入っている乾燥剤で、吸湿性が高い。 |
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石灰石から生石灰を熱成する工程は、フロンガスを無害化することができる。 |
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生石灰を熱成する時に出る熱でフロンを塩素とフッ素に熱分解する。 |
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石灰石と一緒に炉の中にフロンガスを送り込めば、2〜3秒ほどでほぼ完全に分解する。 |
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そして、塩素は生石灰と反応して塩化カルシウムになる。 |
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塩化カルシウムは海の成分の一つであるので、害が少ない。 |
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一方のフッ素は、生石灰と反応してフッ化カルシウムになる。 |
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フッ化カルシウムは蛍石の主成分である。 |
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生石灰を水と反応させると、『消石灰(水酸化カルシウム)』が生成する。 |
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この工程では、膨大な熱エネルギーが発生するので、注意が必要だ。 |
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しかし、この反応は、コンクリート建造物の破壊にも役立つことがわかっている。 |
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従来、コンクリート建造物は、重機による機械的破壊やダイナマイトによる爆破が主流である。 |
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だが、これらの方法で破壊を行うと、大量の粉塵が舞い上がり、動物の肺を冒したり、植物にダメージを与えてしまう。 |
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生石灰をコンクリートに付着させ、水をかけると、熱膨張によりコンクリートに亀裂ができる。 |
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これにより、騒音も起こさずに静かに破壊することができるというのだ。 |
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生石灰や消石灰は、強塩基性なので、手についたりすると、皮膚が溶けたりする。 |
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しかし、その強塩基性は、酸性土壌を中和する改良剤としては、需要が高いのだ。 |
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そして、消石灰を炭酸ガスと反応させると、炭酸カルシウム(軽炭)が生成する。 |
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これがタンカル顔料(炭酸カルシウム顔料)の原料となるのだ。 |
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白石工業は、そのタンカル顔料の国内パイオニア的な企業なのである。 |
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双子の倉庫。この辺りまでは、車で来ることができる。 |
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倉庫の中はガラーンとしている。こういう場所はサバゲ消防・厨房・工房の餌食になりやすい。 |
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倉庫の中に、カッコイイJEEPが止まっていた。 |
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白石工業の名前がしっかりと書かれていた。 |
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石灰砂を袋詰めする装置だろうか。2種類の粉を混ぜ合わせる仕組みになっている。 |
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共同浴場にあった湯沸し器。ダルマストーブのような外観だ。 |
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トロッコの駅と思われる場所。この左下に巨大な空間が広がる。 |
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恐る恐る下を覗きこんで見た。真っ白な空間が広がっていた。白い迷宮の名に相応しい場所だ。 |
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袋詰めされた石灰は、トロッコによって運ばれた。軌道がしっかり残っている。 |
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緑に埋もれつつある小さな木造の小屋。 |
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トラックの頭だけが、残骸となって残っていた。トンボの頭がもげた状態を思い浮かべた。 |
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行く手を阻むフジの群生。廃墟が自然に帰ろうとしている過度期を見た気がした。 |