雄別炭鉱病院

Yubetsu Coal Mine Hospital


廃墟センサーが指し示す方向に、辛うじて車が走れるような道を進みながら、森の中をさ迷う。 ふと、滝の音がする方向を見ると、怪しい建物が建っていた。 ジャングルのように生い茂る夏草を掻き分けながら、建物に近づいて見た。
建物の中には、簡単に入れることができた。紛れもない!廃墟だ!。 ここは風呂の施設だろうか?旅館の風呂にしては小さいし、なんか変だ。 家族風呂にしては、妙な冷たさを感じる。言い知れぬこの雰囲気はなんだろう?
廊下に出た、取りあえず、奥に進んでみることにしよう。 ここまで来て、ハッと気付いた。病院だ!ここは手術室に違いない。 手術台などは一切残っていないが、壁の様子ですぐにわかった。
そういえば、雄別にも廃院があるという話を思い出した。ここのことなのか? 長い廊下が、隣の大きな建物に続いているようだ。早速、潜入調査開始。 おお?1階のロビーがなんか丸いカンジでおシャレな建物だ。
長い廊下が奥の方まで続いている。それにしても、物凄い落書きだ。 病院機材どころか、壁もなくなりかけており、ほとんどコンクリだけになりかけている。 外から見ると、完全に森に覆われているのがわかる。
ここまで来て、ハッとした。見た事がある光景だ。 この独特の螺旋スロープ。ネットで見た事がある。間違いない。 ここがあの有名な『雄別炭坑病院』だ。正しくは隔離病棟らしい。
落書きだらけなのが残念だが、この独特のスロープが美しい。 病室には2段ベットの跡が残っている。往時の姿を偲ばせる。 何故か、大部屋に残っていた試着室のような遺構。何があったのだろうか?
この病院ができたのは昭和27年。その割りには現代的な建築だ。 部屋と部屋の隙間に作られたような狭い風呂場。しかし、タイルが割れていない。 個室の壁だけが取り去られたトイレ。木材が貴重だったからだろうか。
こちらは女性用。産婦人科によくあるタイプの便器だ。 屋上に出て見た。この病院は3階建てで、その上に屋上がある。 この病院は、どのくらい時を重ねているんだろう。
そんなことを考えながら、独り、病院内を歩き回った。 自分以外、誰もいない空間。静寂が心を落ちつかせる。 ふと、壁の落書きに目をやると、21年前の日付が書かれていた。
窓に絡む蔦は、生き生きとした季節を迎え、廃墟に彩りを与えていた。 廃墟になってから手向けられた千羽鶴。故人への想いが伝わる。 美しき回廊の向こうに広がる静寂の世界。回廊のテーマ曲が頭の中に流れる。
止まった時の長さだけ、成熟を深める廃墟。 美しい半円形のこの建物は、あと何年、このままでいてくれるだろうか。 今まさに、森に呑み込まれようとしていた。

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